大博打で大損する理由

私は、あまり競馬をやらない。去年はダービーと有馬記念だけだった。若い頃に懸命に必勝法を研究したことがある。苦吟辛苦して得た結論が「競馬で儲けるのは不可能」であった。それ以来夢中になったためしがない。これまで競馬で散々な思いをしている人は、年の初めに競馬を見直してみたらいかがだろうか。

まだ記憶に新しいが競馬に絡んだ横領事件があった。
以下はZAKZAK 2005/12/08から全文記載。

東京三菱横領女…競馬命、つぎ込んだ額2億5千万円
夫に無心され…

 東京三菱銀行港北ニュータウン支店(横浜市都筑区)の顧客から預金約10億円が不正に引き出された事件。神奈川県警に詐欺容疑で再逮捕された同行元派遣社員の女(55)は、共謀として同容疑で逮捕された夫(57)に馬券代を無心され、犯行に及んだことが8日までに分かった。突っ込んだ額は年末ジャンボ宝くじ級の2億5000万円!! よほど勘が悪かったようで、結局はスッテンテンで御用となった。

 調べによると、夫婦は主に中央競馬にハマり、平成6年ごろから電話で投票ができるPAT会員となり、専用口座を3つも開いていた。夫は消費者金融10社から借金をするほどのめり込み、「何とかならないか」と、女に馬券代を無心。口のうまい女は「年利2%の高金利商品がある」と裕福な顧客らに持ちかけ、実際には総額2億5000万円を馬券代に突っ込み、一獲千金を狙っていた。同県警は、ネコババした大半の金は馬券に消えたとみている。

 このほか“盗難”されたカネは東南アジアへの家族旅行に使われていたことも判明。放蕩(ほうとう)の限りを尽くしていた。

 夫は三菱自動車に勤務していたが、数年前に同社を早期退職。その後は“プータロー”だった。川崎市麻生区の高級住宅街にある自宅は、かつて同社の社宅だったが、現在は家賃18万円の借家。夫婦はミニチュアダックスをはじめ、室内犬2匹を飼っており、「毎日、犬のしつけ教室に通わせるための迎えの車がきていた」(近所の住人)。もともと動物が大好きだったようだが、それにしても2億5000万円も馬のために使うとは…。

競馬をやる人がこの記事で興味をもつのは、「夫」が1レースに賭けていた金額であろうか。それとも賭け方であろうか。意外と知られていないがPAT会員は掛金上限が1回(1レースではない)100万円、1開催節(土日の2日間)で9900万円と決められている。専用口座を3つも開いていたというから、1節に3億円近い金額を賭けることが可能だったことになるが、目立たないように分散することが目的だったかもしれない。いずれにしろ「本命買い」していたことは間違いないと思うのである。「穴買い」でない根拠に昨年10月22日のサンスポから次の記事を引用しよう。

  東京競馬で1846万馬券公営競技史上の最高配当
22日に東京都府中市東京競馬場で行われた日本中央競馬会(JRA)、東京競馬第12レースの3連勝単式(3連単=1−3着を着順通りに当てる)で、競輪、競艇などを含めた国内の公営競技史上最高となる1846万9120円の配当を記録した。

ダートの1400メートルで16頭が争ったレースは、1着に単勝16番人気のゼンノエキスプレス、2着に12番人気のカネスベネフィット、3着に3番人気のケイアイカールトンが入る大波乱となった。夢の配当となった3連単「(3)−(11)−(4)」の組み合わせは、3360通り中3344番人気で、的中が18票(1票100円)あった。

これまでの最高配当は、今年5月に地方・大井競馬の3連単で記録した1300万390円(的中1票)。JRAの最高は、今年4月に福島競馬の3連単で記録した1014万9930円(的中9票)だった。

よく万馬券が的中すると100円(1票)でなく200円買っておけばよかった。いや1000円買っておけば…と皮算用するが、この記事の大井のレースの場合は、1000円(10票)でも1万円(100票)でも、よけい買ったとして、払戻が、10倍になったり、100倍になったりはしない。1300万円390円の払戻金に750円上乗せ、または7500円の上乗せになるだけである(1票あたりの払戻が10分の1とか100分の1になるから)。
この理屈がわかれば、福島の例でも、東京の例でも、大穴に高額投資すれば、オッズを極端に下げてしまい、割が合わない馬券になってしまうことがおわかりであろう。だから、高額投資で儲けるとすれば本命買いしかない。本命買いの馬券戦術に、マーチンゲールといって当たるまで掛金を倍額していく、面白くもなんともないやり方がある。金があれば勝てると錯覚して、これをやったのかも知れない。それにしても毎年負かされて懲りもせず、10年間も同じやり方を続けたとは考えられないところである。
真相はやぶの中だが、この横領犯はスッテンテンになってしまったわけだから「本命買いは損な買い方である」という教訓を残したことにならないだろうか。