『皇室典範』 女性皇族と女系皇族は2世までを終身皇族に!

 「奉祝ムードの中で、政府は皇室典範改正を先送りするが、それでいいのか。」
 東京新聞は9月7日の『こちら特報部』で上記の設問を立て有識者の意見を紹介している。

所功京都産業大学教授は「もう改正は急がなくてもいい、というのは錯覚だ。問題は近い将来どうなるか、ということで、男系男子に限ると継承が不安定になるし、『男子を産まなければダメだ』というのでは皇族のおきさきになる人もいなくなる恐れがある」と指摘する。

所教授は「制度として女性・女系まで広げた上で、男子優先とする」という立場。「女性宮家をたてられるようにすれば、そのお子さまを、後継ぎのいないほかの宮家の養子とすることもできる。男子が生まれたことで、冷静に議論を進められるのではないか」と期待する。

皇室ジャーナリストの松崎敏弥氏も「女性皇族の活躍の場は広がっている。女性・女系を容認し、結婚しても宮家を継げるという方向での改正が必要。旧皇族皇籍復帰という案もあるが、戦後、GHQの方針で皇族の身分を離れて六十年たって、また戻っていただくのは旧皇族の方々にとっても大きな負担。それよりも女性皇族の地位を守る方が大切だ」と主張する。

このお二人の意見を支持する。
今の皇室典範のままでは内親王や女王は結婚後は皇族から民間人になる。皇室の公務も縮小して行かざるをえなくなろう。一度皇族でなくなってしまうと時計の針を戻すことができ難いことは、旧宮家の復活が国民的な同意が得られていないことからも明らかである。「(皇室典範問題は緊急な課題でなくなったので、次は)少なくとも40年ぐらい先の話でしょう」(麻生太郎外相)は、皇室の基盤を忘れた問題外発言であるが、濃淡の差はあれ、「火中の栗を拾いたくない」政治家によって政局がリードされて行くことを危惧する。「20年前に今日の事態は予測できたのであるから、その当時から議論し、対策を講じるべきであった。遅きに失した感がある」という意見が昨年中の皇室典範改正論議の際にも反省材料として取り沙汰されていたことを、のど元も過ぎないうちに忘れてはいけない。

所、松崎両氏の「女性・女系容認」に対し、大原康男国学院大学教授は「男系男子による皇位継承」を支持する立場だが、早急な改正への議論が必要という点では一致する。

「今の皇室典範のままで当面の危機は克服できる可能性が出てきたが、新宮さまの世代では、まだお一人しか男子がおられない。この宮さまが将来皇位につかれたとすれば、傍系からの継承になる。過去、傍系からの継承は全体の45%もあり、それを支えてきたのが宮家。このままでは宮家が断絶する恐れがある今、法改正または新たな立法で宮家を拡充することが先決だ」(大原教授)

問題は、議論を続ける上で、「女性・女系天皇」を容認した有識者会議の報告書を、どう取り扱うか、だ。先の所教授が「報告書には、膨大な資料をもとに詳細なシミュレーションをした参考資料がついている。新たな議論をする上で大いに参考になる」と、報告書を「土台」とした建設的な議論を求めるのに対し、大原教授は報告書は白紙に戻すべきだ、と主張する。
 …中略…
旧皇族皇籍復帰について、報告書は「今上天皇との共通の祖先は約六百年前にさかのぼる遠い血筋の方々」であり「国民の理解を得られない」としているが、大原教授は「最初の皇統の危機に際して皇位につかれた継体天皇(六世紀)は二百六十年前、直近の危機であった光格天皇(十八世紀)は百三十年前に、それぞれ分かれた血筋につながっておられた。六百年と二百六十年、あるいは百三十年の差は、長い天皇制の歴史の中では相対的な差でしかない」と反論する。

私は大原氏の反論は詭弁だと思う。過去の天皇が5世孫以内で継承されてきたという事実が重要なのだ。「あの天皇の曾孫にあたるお方だから」という理由で支持され継承されてきた歴史と「この方の20世前の人が天皇ですよ」という歴史的事実を同列で論じることはできない。

皇室典範改正が棚上げされたままでは、二十年後、三笠宮寛仁家の長女、彬子さまは四十四歳、女性皇族で最も若い愛子さまも二十四歳。ほとんどの女性皇族が結婚で皇室を離れている可能性が高い。

先の松崎氏は「親王誕生で女性天皇という結論を急ぐ必要はなくなった」としながらも、「天皇家皇位継承者がいなければ、後を継ぐというのが宮家の存在意義。宮家がなくなってしまってはいけない。宮家のことを考えると、議論は、この一、二年の間にやらなければいけない」と指摘する。

松崎氏の意見に賛成だ。男児出産で「男系男子皇族は終身かつ永世皇族であり、男系男子皇族のみが皇位継承できる」という原則は当面続けることが可能になった(続けるべきことになったと言い換えてもよい)。しかし皇室の安泰をはかるためには、今から実行すべきことがある。それが表題の「女性皇族と女系皇族は2世までを終身皇族に!」である。
たとえば、秋篠宮家の眞子様佳子様今上天皇の2世であるから、結婚後も終身皇族となる。したがって、配偶者となる夫も皇族となる。現皇室典範の第1条は変更しないから皇位継承されない皇族であるが、皇室の公務に終身従事していただくことになる。そして、万が一、男系男子による皇位継承ができなくなって、女性天皇女系天皇に移行するときにどうしても必要となる宮家として残っていただくわけである。
愛子様は、皇太子の長女であるから当然宮家を創出し終身皇族として公務に励めなされることはもちろんのこと、愛子様の子も2世にあたるから女系の終身皇族となる。眞子様の子は、秋篠宮天皇に即位したあとの結婚なら2世であるから終身皇族、即位前に結婚なら3世であるから性別を問わず、結婚後は民間人になる。眞子様の子は結婚前までは皇族であるが、結婚(35年以上先)が秋篠宮天皇になられる前なら結婚後は性別を問わず皇族を離れる。結婚前に秋篠宮が即位しているなら天皇2世であられるから終身皇族となる。
なお、皇族の定義を、「天皇の血族で、皇籍があるもの」とし(したがって、両親いずれかが生まれながらの皇族でなければならない、ということになり循環論法となるが、このことこそが天皇になれるのは「皇族」=「天皇の血族で、皇籍があるもの」だけという万世一系の由縁である)、そして皇位継承は「皇族限定・男子優先だが、傍系含めて男子不在なら直系長子優先」とする。
このような仕組みに皇室典範を改正しておくべきである。


宮家が残ることが肝要で、宮家さえ残せれば、「男系祖先が天皇であった民間人が父親で、前天皇が母親である、男性天皇が出現する」というケースも22世紀以降にはありえる。一方で、「男系男性皇族のみが終身かつ永世皇族」ということにこだわり、男子不在になるまで宮家存続の算段を怠った場合は、いずれ、両親ともに民間人(皇族から離れた人や離れた人の子孫であろうとも民間人は民間人)であったような人を天皇にするという掟破り(皇籍復帰は禁じ手だ!)をすることになり、国民との信愛にもとずく皇室制度はいっぺんに崩れてしまうことになろう。いまが岐路である。