勝馬推理に重要なのは何か(2)

総合評価でポイント付けして、勝馬がわかればどんなによいだろう。先に26のファクターをあげたが、これらすべてを多変量解析で評価することが可能だろうか。可能だとして実用になりうるだろうか。おそらく、これらの要素は常に重要なのではなく、レースによってイレギュラーなもののはずである。したがって、イレギュラー度の低い要素を重視し、イレギュラー度の高い要素ははじめから捨ててかかるのが有効かもしれない。イレギュラー度の高い要素とはつまるところ法則としての安定性に欠ける要素である。あるいは流動性が極めて高い要素ということにもなる。
この観点から消去できる要素として、厩舎、騎手、ローテーション、出目、展開、枠順、予想紙、馬体重の増減、パドックでの馬の調子をあげておく。

ローテーション
連闘の取捨、休養明けの取捨、2走ボケの判断、どれをとっても正逆の評価が可能であり、法則としての安定性にかけている。ちまたの解釈はすべて結果論でしかなく次走にも通用する根拠が薄弱ではないかと思う、
展開
一般に重要なファクターとされているが、展開のバリエーションは無数に存在し、推理すること自体ムダといってよい。
枠順
枠順の有利不利は展開しだいで異なることが多い。展開自体、不安定な要素である以上、枠順にパターン化した法則はない。
予想紙
予想紙のあてにならないことは衆知のとおりである。
馬体重の増減
馬体重500キロの馬が10キロ増減したところで率にして2%(人間でいうと1キロ)。それを好材料ととるか、悪材料ととるか、一概に決められない。
パドック
主観的な要素が強く、専門家の判断さえ、好結果に結びつかないことが多いことを考えれば、当日パドックを見れるとは限らない大方のファンはまったく無視してかまわない。

これらの要素が勝馬選出に重要な役割を果たすことがないとは言い切れないが、パーフェクトは不可能の仮定の下に判断をくだす以上、レースの80%はこれらの要素で決まるという要素を残し、他の20%は捨ててかかるべきである。不確かな20%に振り回されて、読みに一貫性が欠けてしまうと、それが好不調の波を増幅させる原因になってしまうのである。騎手で買うというやり方で成果をあげている人もいるだろう、展開推理で的中させる自信家もいるかもしれない。しかし、これらのやり方では持続した成果をあげるには無理があるのではないだろうか。


ここまで『勝馬推理に重要なのは何か(1)(2)』を読んで疑問を持たれなかった人は、『なぜ競馬に必勝法がないのか』という私の本論に対しての理解が不足しているはずである。競馬ファンは、これまでこのようにして勝馬推理(=勝つ可能性が最も高い馬を見つける)という思考法に毒されてきたのである。的中させることと儲けることは違うことを身体では理解しながら、「的中度を高めれば儲けることができる」という錯覚に囚われてきたのである。