鋭明な英国人の述懐

勝負に勝った時、私はあたかもチェスで巧い手を使ったかのように、われながら自分は抜け目のないヤツだとなかば思いこみながら、結局すっかり負けてしまうまで賭けを続けていた。もちろん賭けで儲けられるなどというのはまったくの錯覚だった。わかっていたはずなのに、その錯覚はしじゅう私につきまとっていた。勝てば勝ったで当たり前だと思い、負ければ負けたで我意を張りすぎたせいだとか、間違った気まぐれだったと一人決めしていた。
確率の世界―チャンスを計算する法 (ブルーバックス 109)(ダレル・ハフ, 国沢清典 講談社ブルーバックス 1967年 P73)