天皇って何だ

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議会制民主主義は衆愚政治の典型です。ふだんは議会制民主主義の熱心な支持者だったテレビが、『郵政民営化選挙』の結果を衆愚政治よばわりしているわけだから、まちがいのない事実です。国家の替わりに大手の会社で考えてみると話はわかりやすくなります。
取締役選挙に従業員全員が参加できる会社は無いし、重要な意思決定を従業員の多数決で決めているという会社もありません。あったらとっくに潰れているでしょう。では有能かつ頭脳明晰な取締役会議ですべての意思決定がなされることに問題はないのか。問題ありです。生産や営業の最前線で働く人や、投資家や消費者の声が意思決定に反映される保証がないし、私利私欲が正論をしりぞけ、結論を曲げてしまうこともよくある話です。取締役どうしが激論を交わし、対立がしこりとなって残ってしまうこともあります。派閥の争いになったら正しい結論など期待するほうがおかしいということにもなるでしょう。
こうした危惧を避けるために経営者もいろいろ工夫しています。従業員の経営参加やマーケット調査もその1つですが、会長の裁可「鶴の一声」を仰ぐということも重要です。私利私欲をもたずに経営や社会全体を見渡せる会長が理想でしょうが、生身の人間であるからそこまでは求めず、とにかく最終権限者が会長ということになっているわけです。次の社長を決める取締役会選挙がある会社でも会長選挙は行われません。大学には学長選挙がありますが、あれはほんとうの会長ではない、したがって本来の会長の働きもできないといってよいかと思います。
これを議会政治に置き換えて見ると天皇の必要性が明らかとなります。私利私欲なしで国家に関与し続けることができるのは、天皇のほかに存在しません。国柄を代表できる人を対外的には元首といっています。元首がいるということは「わが国は他によき方法がないので議会制民主主義という衆愚政治で国を運営しているが、天皇という元首がいて、国が壊れないようにしっかりお守りしているので、どうぞ安心してお付き合いください」という外交メッセージです。首相では任期が短く元首は無理です。日本と信頼できる国交を結ぶということは、日本国議会に足を運ぶのではなく皇居に参って天皇にお近づけすることなのです。